畳糸い草の状態から畳表を作る時は、い草を1本1本編み込んで表面を均一にする必要があります。その際必要となる糸を経糸と呼ばれますが、経糸にも麻糸と綿糸があり、い草の量や目指す品質によってどちらを使用するか異なります。では、麻糸と綿糸にはどのような違いがあるのでしょうか?

麻は中央に大きな空洞がある植物繊維であり、他の植物繊維よりも通気性、吸湿性、発散性に優れています。麻の代表的なものとしては、人類が最古に使用した繊維といわれるリネンや、ラミー、大麻、ジュート、洋麻、マニラ麻など、世界各地に20種類近く存在しています。日本では熊本県が大麻の一大産地として有名であり、畳に使用される経糸も以前はすべて熊本産でした。しかし、熊本産大麻が入手困難となってからは、タイやインドなどで生産されているジュート糸、フィリピン産のマニラ糸、綿糸を使用するようになりました。麻糸の特徴は太く丈夫なため、綿糸よりも多くのい草を編み込むことができることであり、特にマニラ糸は仕上がりの美しさや耐久性の高さなどから最高級品として知られています。

一方、綿はインド原産の植物繊維であり、日本には平安初期に中国から貢物として贈られてから流入したといわれています。綿の繊維は縦方向に対して天然の捻りを持っているため強度を高めることができますが、麻と比べると耐久性に劣ります。衣類にもたくさん使用されているように肌触りが良くて吸水性が高く熱にも強いですが、長時間日光に当たると変色しやすいです。耐久性が低いため、畳表を作る時は綿2本をダブルで使用されることが多いですが、それでもい草の打ち込み量が少なく、普及品、下級品に使用されることが多いです。しかし、綿糸を麻糸と組み合わせて使用される場合も多く、ダブルで使用することでい草の目の詰まりもより密になります。もちろん、もっとも耐久性が高く見た目も美しいのは麻糸をダブルで使用した場合ですが、超高級品以外ではなかなか使用されません。